交流分析を提唱した人
交流分析は、エリック・バーン(Berne, E. 1910-1970)が提唱した心理療法。
transactional analysis=人と人のやりとりの分析
交流分析の理論的背景
人間の自立性の達成に特徴がある。
人間関係や個人の発達理解、組織開発などにも広く利用されている。
- 自己理解、自己洞察を得られやすいように構成されている。
- 「今、ここ」で過去の体験を再現することで、その体験を検討し、自分の意思決定により新たな自己の行動を選択できる方法論がある。
- 親密さを重視し、真実の関わり、心からの優しさ、温かさを強調する実存的アプローチ。
交流分析の主要概念
ストローク
人の存在を認める行為。
ストロークはもともと「なでる、さする」など体を愛撫する意味の言葉で、これに精神的な意味を加えたものを、交流分析ではストロークと呼ぶ。
ストロークの分類の一つとして、肯定的/陽性のストロークと否定的/陰性のストロークという分け方がある。
肯定的/陽性のストロークは、「自分は大事にされている」「私はかちのある人間と認められている」という喜びや自信を感じ、成長につながるストローク。
否定的/陰性のストロークは、「自分は嫌われている」「私の価値は認められていない」など、憂鬱や自信喪失をもたらすマイナスのストローク。雑言や体罰などもこちらに含まれる。
交流分析の分析4種類
人間には3つの異なる表現システム(自我状態)があり、状況や相手に応じて表現して生きている、とする。
P=ペアレント
A=アダルト
C=チャイルド
自由自在であることが望ましいが、誰しも多少の偏りがある。
親の自我状態は、過去に自身の親から取り入れたものと考える。
コミュニケーション(交流)を、PACの視点で分析するのが交流分析であり、それには次の4つの段階がある。
構造分析(自我状態)
支配権を握る自我状態は何か?
PACを用いて、人格の構造を詳しく学ぶ分析で、次の3つの分析の基礎となる。
交流パターン分析(やりとり)
対人関係において自分のどの自我状態から相手のどの自我状態にメッセージを発しているかを明らかにする。
P/A/Cの、どの状態で誰に話しかけ、相手がどの状態で反応するかを詳しく観察することで、人間関係とコミュニケーションを改善するための手がかりを得る。
ゲーム分析(人生ゲーム)
TAの治療的活用法の中核。
自分が意識せずに非生産的なやり方で、相手を操作したり、相手に反応している傾向に気づき、その修正を図っていく。
表面的な心地よさの裏には必ず不正直な駆け引きがあり、それがノイローゼや慢性的悪循環の人間関係を作る元となっている。
脚本分析(人生脚本)
脚本分析は、構造分析、交流パターン分析、ゲーム分析の3つの分析を行った後に行う。
人生をドラマと見立てて、そのドラマの中では登場人物各自が独自のシナリオを演じる。その中で人が演じる役割や筋書きが「脚本」。
脚本を分析し、自己実現するため脚本を意識的に建設的なものに書き換えようという、TAの最終段階。
機能分析とエゴグラム
機能分析(構造分析)
交流分析における構造分析では、自我状態を以下の5種類あると考える。
- 批判的な親の状態(CP:Critical Parent)
- 養護的な親の状態(NP:Nurturing Parent)
- 大人の状態(Adult)
- 自由な子どもの状態(FC:Free Child)
- 順応した子ども(AC:Adapted Child)の状態
エゴグラム
エゴグラムとは、交流分析の構造分析理論に基づいて、自我状態への心的エネルギーの分配状況をグラフ化したもの。
自我状態の5つの機能の関係とそのエネルギーの大きさを棒グラフまたは折れ線グラフで表したもの。
基本的構え
交流分析では、幼児期に親との触れ合いが主体になって培われた、二に源と人生に対する態度を「基本的構え」と呼び、以下の四つがあります。
- I am OK, you are OK. =自己肯定・他者肯定
理想とされる姿勢。
この構えで生きる人は、共感に支えられた、親密で、血の通う交流を行うことができます。 - I am not OK , You are OK. =自己否定・他者肯定
劣等感に悩んだり、憂鬱になりやすい人がとる構え。
自己卑下の気持ちや消極的な態度のため、親密な関係を結ぶのが難しい。 - I am OK , You are not OK. =自己肯定・他者否定
支配的で疑い深い人がとる構え。
排他的で攻撃的、被害妄想的で、他者を支配・コントロールしようとしたり、相手の欠点をことさらに取り上げたり、都合の悪いことは他人のせいにしたりします。 - I am not OK , You are not OK. =自己否定・他者否定
絶望的あるいは虚無的な構え。
人生は無価値なもので、何も良いことはないと感じ、他人が与えようとする愛情や注目を拒否し、自分の殻に閉じこもり、他人と交流するのをやめてしまいます。