キャリアという言葉についてまとめました。
ちなみに、言うまでもありませんが、この記事で言う「キャリア」とは、職業や生き方に関するキャリアを指します。
目次
辞書的定義
「職業」や「進路」と言う代わりに、「キャリア」(career)という言葉がしばしば使われます。
その他、経歴、履歴、職業の専門領域、仕事など、使う人や場合によって幅広い意味を持たせられる言葉です。
デジタル大辞泉
キャリア(career)
《「キャリヤ」とも》
1 職業・技能上の経験。経歴。大辞林 第三版
キャリア【career】
① 経歴。経験。 「豊富な-の選手」
② 職業。特に、専門的な知識や技術を要する職業。また、それに就いている人。出典:コトバンク
厚生労働省の定義
キャリアとは、一般に「経歴」、「経験」、「発展」、さらには「関連した職務の連鎖」等と表現され、時間的持続性ないしは継続性を持った概念とされています。「キャリア」を積んだ結果として、「職業能力」が蓄積されていくものです。
この定義の出典を、スクールの授業では「一読を」と勧められました。結構な文字量です。。
キャリアに関連する学問領域での定義
心理学など関連の学問では、以下のような定義がなされています。
個人の職業選択、キャリア発達を重視した定義
- 人が生涯を通じて関わる一連の労働や余暇を含むライフスタイル
- 役割統合(role integration)に影響を与え、かつ相互に関連する現象としての労働、教育、家族などの選択に当たって個人を援助することに含まれる包括的概念
- 人が生涯に行う労働と余暇の全体
- 自分が何をするか、自分をどう見るかを結び付ける現象的、行動的概念。それは社会的環境、将来計画、能力や特性などとの関連で、自己をどう見るかを規定する
組織や社会学的な視点を重視した定義
- 仕事に関連した経験と活動に結びついた一連の自覚的態度と行動(career)
- 個人が時間と空間にしたがって進む組織化ないしパターン化された経路(career path)
- 会社や組織において階級の上昇を示すものとしての外的キャリア(external career)
- 自己のキャリア形成がその人の自己概念を構成するという内的キャリア(internal career)
- 事業所内のある職業の上向移動の機会(career ladder)
- 事業所内のある職業の上向移動と水平移動のすべての機会(career latice)
キャリアそのもの、もしくはキャリアの一部を指す言葉として
仕事の区分
- 仕事を分業化する場合の最低の単位としての課業(task)
- 1人が分担する課業の集まりである職位(position)
- 内容と責任の程度が同一である職位の集まりである職種(job)
- 内容と責任の程度が相当程度共通し、関連性の強い職務の集まりである職務(job title)
仕事の意味・目的による区分
- ある目的のために行う努力(work)
- 肉体労働、苦痛を伴う労働(labor)
- 最も一般的な意味での職業(occupation)
- 心理的に自分の職業というアイデンティティを持つ転職(vocation)
- 専門職業(profession)
職業と産業の違い
職業
生計維持のために何らかの報酬を得ることを目的とする継続的な人間活動。一定の社会的分担もしくは社会的役割の継続的遂行。
産業
経済活動の場所的単位
日本におけるキャリア概念を考える際の参考
キャリアという言葉が持つ基本的な要素と広がりがわかりやすく示される専門家の指摘は以下の通り。
米国スーパーさんの指摘(1976年)
- 人生を構成する一連の出来事
- 自己発達の全体の中で、労働への個人のかっよとして表現される職業と、人生の他の役割の連鎖
- 青年期から引退気にいたる報酬、無報酬の一連の地位
- それには学生、雇用者、年金生活者などの役割や、副業、家族、市民の役割も含まれる
木村先生の考え
- 個人の人生の中で内的にも外的にも、何らかの意味で発達的な要素を含む仕事(職業的)移動
- 個人の生涯にわたって継続する
- その中心となるものは個人にふさわしい人間的成長や自己実現であることが含意されている
職業や進路を「キャリア」を呼ぶ場合は、単なる表現の変更ではなく、概念の変更を意味していることに留意すること。
背景には以下のような、学校・企業・社会の社会的・経済的な変化があります。
- この分野(キャリア)に関連する諸科学(心理学、社会学、教育学、経営学、行動諸科学など)の発展
- 個性の尊重、その育成・伸長に重点を置く教育理念
- 人生の各段階における進路や職業選択の意味の変化
- 個人の自己実現志向
- 学習社会の到来
参考
木村周『キャリアコンサルティング 理論と実際 5訂版』